FINAL FANTASY 3【火は歌う】 -4



   

  (4)地底湖



  青く澄みきった地底湖を、四人は潜水して深く深くまで潜っていった。
 いや ―― 今は『四人』じゃなくて『四匹』だ。


  アリスの白魔法の中に、蛙に変身する魔法があった。〈トード〉という。

  もともとは未熟な魔導師が何か禁を犯した時に罰を与える為に使われる
 魔法で、蛙にされた人間は、呪文を唱えることができなくなる。


  アリスは、今となっては懐かしい『グルガン族の谷』で予言者の一人から
 これを譲り受けていた。

 『光の氾濫』や人間の過ちについて聞かされた後だったから、
 旅を進めてきた彼女に、これからも道を誤らぬよう ―― 教訓を込めて
 くれたものだと思っていたが ―― 考えてみたら、こんな使い方もできるのだ。


  
  水はどこまでも青く透明だったが、底までは見通せなかった。
 泳いで泳いで、石灰を含む白い岩壁に沿って下降する。
 蛙でなければ これほど泳げないし、息が保たなかったろう。


 水面から壁に沿ってグルグルと螺旋を描き泳いで、一行は湖を調べた。
 すると、とある場所に、岩を穿つ穴を発見する。


  四匹・縦一列になり、潜って進んだ。

 水は透明なのに天然の水路は深く暗く、戻って来られるだろうか、と
 ポポは心配になった。前の影を見失わぬよう、懸命についていく。
 流れは勢いが強かったが、蛙の手足は流石に順応した。

  終点と見るや、彼らは水面に向かって上昇した。

  ぱしゃん、と水面を割って、ムーンが まず出た。飛沫が跳ねる。
 後にポポとアリス、そしてキャンディが続く。



 『みんな来てるなー?』 

  ムーンは頓着せず声を上げた。その鳴き方は、ケロケロ、というよりは
 カラララ、と聞こえた。背が青く、他は白っぽく透き通った青蛙だ。
 目が丸く大きめで、何だか可愛らしい。


 『水、ちょっと冷たかった…』

  ポポは雨蛙らしく、全長は2cm強と小さめだ。
 ケロッケロッと泣き声が一息毎に途切れる。
 何だか、さっきと色が変わったみたいだ。
 鍾乳石を そっくり真似て、白っぽい茶色になり模様が入っていた。


  アリス蛙はポポと同種らしかったが、若干 体つきが大きかった。
 雨蛙の雌は、雄より一回り大きい。


  残るキャンディは、焦げ茶色で模様の入った、スマートな蛙。
 元の通り、落ち着き払って見えるのが不思議だ。
 跳ねると、何だかジャンプが高い。

 『蛙のままでも会話ができるとはね』

 発した言葉にピーッピヨ、と鳴き声がついて回る。
 思いの外 愛嬌のある声だったが為に、思わず当人は口を噤み、
 あとの三人は蛙の姿のままで笑い転げた。



  無事で居るのを確かめると、アリスは全員を自分の近くに寄せ、
 心得たように〈トード〉の魔法を掛け直した。
 こうすることで、人間の姿に戻れるのだ。


 「ああ、面白かった」


 「着衣まで元通りなのか、凄いな」

  蛙になっている間、衣服や鎧の重さは感じない。


 「それは念じ方次第なんだけど。今、裸じゃ困るでしょう」

 魔法なのに、濡れるのは同じなのか。―― これはちょっと困るな。
 アリスは、目に付かないように少し離れて背を向け、
 長いローブの裾を持って絞った。



  ムーンは水から上がった後の犬のように身震いすると、袖をまくる。
 このままでは風邪をひきそうだったので、ムーンは言った。

 「ポポ、火ぃ熾してくれよ」


 「えっ」 ポポは慌てた。


 「〈黒魔法〉で、できるだろ?」

 「〈魔法〉は日用品じゃないんだけど…
  それに、燃やすものも無くて火だけ出すなんて、凄く大変なんだよ?」

 「堅いこと言うなよ」


  身に帯びている武器や必要最低限の物意外、キアたちに預けてきてしまった。
 それに…ポポが未だに火に対する恐怖心を抱いているのを知って、なお
 彼はこんなことを言うのだろうか。



 「…今は無理だ」―― ポポは言った。
 そもそも、ファイア系の〈魔法珠〉は、使わずに鞄にしまったままだ。
 ポポは未だ火の精霊との契約を交わしていない。


 「………」

  ムーンは無言でポポを見ていたが、


 「…驚いたな…これは、もしかするかもしれないぞ。
  奥に続きがあるみたいだ。行ってみよう?」

  キャンディの声に、踵を返した。

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