(6)山頂で
景色が下から上へ、スライドする。
心はその場に置いてけぼりなのに、身体だけ持って行かれるような気がした。
ひやりとした浮遊感の後、気がつけば地面は遙か下にある。
飛空艇はいい、船底に足をつけていられるから。
しかし、今のように宙ぶらりんでは、どうにも頼りなかった。
たとえ身体は竜の爪でしっかり固定されていても、何しろ
足許がスカスカなのだ。
耳元を過ぎていく風はヒュウヒュウ言って、甲高く嘲笑う。
それが、四人の恐怖心を、ますますかき立てた。
唯一安定しているのは、巨大な竜の羽音だけだ。
眼下には雄大な景観を臨むことができたが、例によって、眺める余裕など
もちろん無い。
「お、落ちるおちる…っ」
「ばかっ、動くな!ホントに落とされたら どーするっっ!!」
頭の中は真っ白。さもなくば、いろいろなことが意味もなく
渦を巻いているに違いなかった。
騒ぎ立て、あるいは言葉を失って運ばれているうちに、
やがて――あれほど求めてやまなかった地面が、ふと近づく。
降りられる、と思ったその矢先、先程まで頼りにしていた竜の前足が緩んだ。
支えるものの無くなった四人の身体は、空中に放り出され、重力に従って
あっという間に――
「ぎゃああああ!!」
――…落ちた。
「…っ」
「……」
「痛〜〜ぁい…」
「〜〜〜〜」
しかし、実際の衝撃は、予想していたよりも格段に軽い。
恐る恐る目を開けて確かめると、そこには枯葉や蔓、鳥の羽毛などが、
こんもりと敷き詰めてあった。
そして広い空間に太い巨木が一本だけ、半ば倒れかけた形で突き出ている。
なんと、朽ちるどころか葉を青々と茂らせて、
すっぽり巣の一部を覆っているのだ。
家の屋根と言ったところか。目立つので、表札のようにも見える。
「ここって…」
実に上手に設えた、竜の住居だった。
四人から見て一番奥の北側、奇妙に抉れた岩山の残骸――は、
竜が自分で掘りでもしたのか、それとも元々在ったのか。
――竜の巨体でも楽に入れるくらい、大きな穴がある。
上手くやったものだ。これなら、雨露だってちゃんと凌げる。
「でっけえ寝床…」
「ああ。ここは、あの竜の巣なんだな…」
為す術もなく、ただただ唖然と四人が見上げるその前で、
竜は空に大きく円を描いた。
改めて目の前にすると、見れば見るほど魅せられる。
感じたのは、恐怖と言うより畏怖だった。
次第次第に込み上げてくる、讃美の想い。
なんて偉大で、堂々としているんだろう。
――これが、竜。太古の昔から存在するという、至高の生命……。
鱗の色は、よく鍛え抜かれた鋼にも似た黒。
悠々と広げられた翼の内側から腹にかけては、七色に輝く螺鈿だ。
その生き物は、力強く、それでいてしなやかで美しかった。
一行が見守る中、竜は山々を渡ってくる風を一身に受けると、
彼らを少しも顧みることなく飛び去った。
「……。行っちゃった……」
ポポが、ぽかんと口を開けて呟いた。顔にくっついていた木の葉を取り払う。
彼は帽子が飛ばぬよう、両手で必死に押さえていた。
そのため、先程放された時 顔面から巣に突っ込むことになってしまったのだ。
「ああ、怖かった。もう、暫く『飛ぶ』のはやめにしようね?」
しみじみ言った弟に、
「そうだな」
キャンディも小さく笑って同意した。
この前の飛空艇といい――自分たちには、どうも『飛行難』とでも言うべき
ものが付きまとっているような気がしたので。
「何だったのかしら…?」
一方アリスも、竜が飛び去った彼方を見つめていた。
てっきり、そのまま食べられてしまうものと思っていたのに…。
「まあいいわ。竜が帰ってこないうちに、ここを出ましょう」
「えっ…アリス、でも」
「どうやって?」
真っ先に核心を突いたのはムーンだった。
360度の景観を示し、ぐるっと見渡した。
三組の視線が、思わず同じところをなぞる。
巣を一周すると、彼は巣の端の方へ歩んでいき、すとんと目線を落とした。
一行が居るのは頂上部だ。本当に山のてっぺん、すりばち状になった部分。
そして、この巣の周りは、見ての通り傾斜がきつい。
特に岩室のある北側から北東部にかけては、殆ど垂直、断崖絶壁だった。
岩盤は硬そうだが、足場があったとしても踏み外す危険があるし、
体力・技術的にも、不安は大きい。
これは、大いに困った。
「どーやって降りるよ?」
「そっ、そんなこと!いきなり訊かれても、
あたしが知るはずないでしょお!?これからみんなで考えるのよっ」
「高すぎるよぉ……」
やはり飛空艇とは勝手が違う。同じく『高い所に居て』も、
危険を感じる度合いがどれくらいかで、感想も違ってくるもの。
誰に何と言われようと、それは絶対だ。
果たして無事に降りられるのかどうか、全てはそこに掛かっている。
足下を見てしまったら最後、怖くてたまらない。目眩がしそうだ。
だから、今度は上を仰ぎ見たのだが、結局途方にくれるはめになる。
穏やかに晴れた空は、本当に明るくて青かった。
――無情すぎる。
途方にくれる弟と妹を側に、キャンディは何かを考えている風だった。
改めて巣を歩き周り、斜面の様子を確かめる。
そんな彼をよそに、三人の間では、お決まりのケンカが始まりつつある。
「帰りたいよ〜〜」
「泣くな!泣いてどうにかなるんだったらいいけどよ、ならないだろ!?
…何だよ。今回言い出したのは俺じゃねえぞっ!」
「何よぉ、悪かったわね!そりゃ、言い出したのはあたしよ!
でも、あんただって。竜が見たいとか、言ったくせにーーっ」
五分としないうちに、泣くわ怒るわの大騒ぎである。
こうすれば良かった、と後悔しても、もはや後の祭り。
お互いに何やかやと責任をなすりあい、果ては昔の失敗まで持ち出す。
「……」
かたやキャンディは、半ば身を乗り出し、傾斜や岩盤を調べていた。
――硬い手触り。
剣を幾度か振り下ろしてみると、刃が鋭い音を発して石を噛む。
かなりしっかりしているようだ。切り立った北側の斜面は無理だとしても、
こちら――反対側ならば、どうにか行けるのではないだろうか。
…大丈夫、足場はある。
それに、ところどころに見える岩棚でなら、小休止もできるだろう。
四人とも、ここまで本格的な岩登りをしたことなど、はっきり言って無い。
しかし、やるしかあるまい。唯一救いなのは、故郷ウルが山と森に囲まれた
――つまり『辺境』だったことか。
山歩きなら多少は心得があるし、起伏の激しいでこぼこ道は そこら中に
あったから、よく歩いていた。木の実や山菜採りを、よくみんなでやったっけ。
勝手が『多少』違うけど、と自分で自分に言い聞かせ、努めて納得する。
この高さを降りるのは困難に違いないが、
このまま竜の住処に留まっているわけにもいくまい。
体力派でないポポやアリスには大変だと思うが、
こうなった以上、頑張ってもらうほかないだろう。
傾斜の緩い部分を選び、少しずつ、慎重に降っていくことだ。
この際、擦り傷・切り傷などはご愛嬌。多少の怪我をしたところで、
無事に降りられたなら幸運というものだ。
それよりも心配なのは魔物の方だ。
またこちらを見つけて、群がってこなければいいけれど。
「ロープが足りるといいな…」
彼は独りごちて、大樹を見やった。その時点で初めて、
言い争っている三人に気づき、目を丸くする。
そして、いつものように止めようと歩み寄った、その足許で…
「クゥ」
声がした。
「……」
そこに居たのは、小さな竜の子供だ。小さいと言っても竜、
両手で抱えるくらいの大きさがあるが。
一瞬驚き――それから微笑み、キャンディは、小さいのと目を合わせる。
「…やれやれ。――ごめんね、起こしちゃったかい?」
肯定か否定か、小竜はクゥ、と返事をした。
「樹の下で寝ていたの?それとも、迷子かな」
再びクゥ、と返事をする。
卵から孵って間もないのだろうか、足許がおぼつかない。
それでも、まだ短い翼をひょこひょこさせて、
太陽の光彩を放つ瞳を一心に向け、
こちらを興味深そうに ―― と、そう思った ―― 見上げてくる。
鱗は成竜と同じ黒色ではなく、光を通すと深い青を見せた。
時が経てば、先程の竜のようになるのだろうか。
「あんまり遠くへ行くと、危ないよ?」
三度クゥ、と鳴いた。
すると、その一際高く響いた声音に、三人が三人とも振り返った。
「何だそいつ、竜の子供じゃんか!スリコミしよう、スリコミ」
「だめだよ、卵から出たとこじゃなきゃ」
「やん、可愛いー!ぬいぐるみみたいっ」
口論など、さっさと放り出してしまう。
「キャンディ、どうしたの、その子?」
「みんなが大きな声を出してるから、起きてきちゃったんだよ、きっと」
「そりゃ悪かったな」
窘める意味を込めてだろうが、珍しく冗談らしい言い方をした兄に
調子を合わせ、ムーンがおどけて返事をする。
彼が目の縁を掻いてやると、小竜は、ぱたりぱたりと尾を揺らすのだった。
気持ちが良いらしい。
「抱っこしてもいい?」とアリス。
「いや、あまり手を出さない方が…小さくとも、竜だからね」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。カタイこと言うなって。
こんなに おとなしいんだぜ?平気だよ」
アリスはほんの少し迷ったが、
「……。じゃあ、ちょっとだけ。ね♪」
小竜を抱き上げてしまった。
瞬間的に身体を強ばらせたポポとキャンディが、
思わず緊張した面もちで見守る。が、しかし。
「良い子ね〜…きゃ、こっち見てる。可愛い〜〜vv」
ふかふかの毛並みの代わりに、つるつるした鱗。
どちらにせよ、アリスは嬉しくて仕方ない。
猫だろうが、犬だろうが竜だろうが、子供は小さくて可愛いのだ。
気が気じゃない兄の様子など目に入りもしない。
…これでは意見を仰いだ意味など、無きに等しい。
結局小竜を抱いたまま、本来の寝室と思しき穴の中へ四人で歩いていった。
「すげえ、広いな」
「あの竜には小さいかもしれないよ」
「…そっか。じゃあ…小さいながらも楽しい我が家、ってね」
歌うように言い直したムーンが、穴の奥を指した。
一番奥には、やはり蔓と藁、羽毛や枯葉で整えた、大きな大きな寝床。
そして一番念入りに整えられた一角に、数個の卵が割れないで残っている。
抱いたのを降ろしてやると、小竜は自分の陣地へ戻り、四人に向かって
翼と尻尾をぱたぱたさせた。
「へえ、お前が一番兄ちゃんか」
「可愛い〜」
「竜って雄雌の区別あったっけ?」
「さあ?」
「驚いたな…」
小竜は四人を見、まだ尻尾を振っている。
「…俺ら、懐かれた?」
「はは、一緒に遊ぼうとでも言ってるのかな」
「ほらほら、ポポも」
後ろに隠れがちだったポポが、アリスに前へ押し出される。
「でっ、でも…」
「怖がらなくても大丈夫よ。とってもおとなしいじゃない、この子」
言われて、彼はおずおずと近づいた。
「………。噛みつかないかな」
「平気、そんなに怖がることないわ」
彼は躊躇ったが、しかし…小竜は人なつっこく寄ってきた。
円らな瞳に見つめられ、可愛らしい声で鳴かれてしまうと、もう矢も盾も
堪らない。昔っから、ポポは動物の子供にめっぽう弱かった。
流石に竜はなかったけれど、怪我をした小動物を森で拾って介抱したり、
捨てられた仔犬や仔猫を拾ってきて内緒で飼おうとする、なんていうのは
日常茶飯事だったのだ。
とうとう彼は、そっと手を差し出した。――と。
――ぱく。
「――○△×◎□■!!」
「あああーーっ!!!」
「アリス!そのまま抑えてろ、こじ開ける!!」
「駄目だ、変に刺激しちゃ!いいかい、そっとだ…
ポポ、手を動かさないで!」
「きゃああ、〈ケアル〉!〈ケアル〉ーーっ!!!」
「――――」
「毒消しっ、どくけし何処だ!ポーションは!?」
「ごめんね、ごめんねポポーーっ」
すったもんだの末、彼らはどうにか小竜を引き離し、
ポポの手の治療を終えた。彼の手は無事に繋がっている。
無理矢理引き出そうとしていれば、ただでは済まなかっただろうが。
ポーションや化膿止めをたんまり使い、白魔法があったのが不幸中の幸い。
大事には至らなかった。でも、彼の手には小竜の歯形が くっきりピンク色に
残ったままだ。果たして、時間が経って消えるかどうか。
「…ご、ごめんなさい…」 今度はアリスの方が涙目になった。
「ううん、ありがとう。アリスが居なかったら、どうなってたか分からないよ。
助かった」
「ごめんねーーっ!!!」
ふええん、と泣き出し、もう傷は塞がっているというのに
包帯をぐるぐる巻きにする。その横で、キャンディが脱力した。
「良かった…次からはもっと、気をつけような?」
「「うん」」
二人して、こっくり頷く。
「ふうぅ。…こいつめ、びっくりさせやがって」
ムーンは冷や汗を拭う。しかし次の瞬間、にっと笑った。
小竜はといえば無垢そのものの顔で、きょとんとする。
まるで、「何かした?」というように。
…やがて小竜は、木の葉がこんもりと積まれた一角へ歩いていって、
丸くなり、とろとろと微睡み始めた。――ムーンの笑みが、苦笑に替わる。
「いい気なもんだぜ、まったく…」
事態が落ち着くと、一行は早々に下山の準備に取りかかった。
キャンディは、荷物の中からロープの束を取り出す。
街で仕入れた、登山用のものだ。何とかいう植物の繊維を束ねてあるらしい。
丈夫で、多少のことでは切れたりしないとか。
「まさかと思ったけど、用意しておいて良かった」
キャンディは微かに笑った。
いきなりこのような斜面に挑むなど、予想していなかったが。
「いつの間に」
ムーンが言う。頼まれた買い物に、こんなロープは無かった筈だ。
ありがたく思うと同時に、自分は必要なものを見落としたようで、
ほんの少しだけきまりが悪い。
しかしまあ、何にせよ良かった。これで何とか下山ができそうだ。
一本きりの巨木に、ロープを幾重にも巻き付けて縛る。その片側の先端には、
野宿のためにと用意してきた、大ぶりの手斧がつけてある。
斧をしっかりと地にくい込ませ、抜けないように固定した。
「片側は、これで完了、と」
次に、空いたロープの片端を持ってくる。
続いて荷の中から登場したのは、何やらややこしい形をした、革のベルトだ。
腰に結び、更にロープ本体との間を、丸い金具と帯とで固定する。
「上着は着てるよね?これをこうやって結んで。
もし足を踏み外しても、大丈夫だから」
しげしげと装着したものを確かめる弟たちに、キャンディは言った。
「登山用具。…いくつか、即席だけどね」
「なーるほど」
「やっぱりここ、降りるんだ…」
これで大丈夫か。不安は大いにあったが、下りるより他に道はない。
頭の中にあった知識と、一握りの経験を掘り起こし、勇気を奮い立たせる。
キャンディは確信的に頷いた。心底不安そうなポポと、
流石に表情を硬くしているアリスを、なるたけ安心させようとしながら。
「いいかい、ここで僕がロープを支えて、少しずつ下に垂らしていく。
と言っても、三人分の重みをいっぺんには無理だから、
一人ずつ行くことになるけど。
ムーンは、一番先に降りて、足場を示してくれ」
ムーンが頷いた。
「下りる時は、ロープがあるからって、完全に手でしがみつかないように。
足を使って身体を安定させる」
皆のベルトを確認すると、彼は仕上げに自分もベルトの具合を確かめた。
とんとん、と片足を踏みならす。
「怖いかもしれないけど、思い切って身体を離して。
斜面にぴったり張りつくと、それきり身動きが取れなくなるから。
歩くんじゃなくて、斜面を思いっきり蹴るんだ。
それで、とりあえず、あそこまで下りる」
目の先に、とにもかくにも全員が休めそうな場所が見えた。
「でも」とアリス。「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だ、ちゃんと支えるから。約束する。信じてくれ」
こう言うしかなかった。あくまで力強く、肯定する。
「んもう!そうじゃなくって。キャンディは?」
「僕?大丈夫だよ、心配しなくていい」
「このロープが解けちゃうなんてことは…?」
「大丈夫。カナーンで船乗りに、絶対解けない結び方を教わったんだ。
出航は断られちゃったけど、良い収穫になったよね」
キャンディは声を立てて笑う。
船乗りの知恵であり、山男の知恵。
絶対に解けないけれど、しかるべき部分をしかるべき方向に
ちょいと引いてやりさえすれば、簡単に解けるという。見事なものだ。
彼はもう一度丹念にポポのベルトと金具を確認し、
身体を低くして目線を合わせた。
「…うん、大丈夫だ。――ポポ、大変かもしれないけど、行ってくれないか。
このまま、じっとしているわけにいかないんだ。
そのうち、さっきの親竜も帰って来ちゃうだろうし」
「………」
ポポは迷い、……散々迷い、
「………うん」
とうとう、こっくりした。
このまま居るより、一刻も早く安全な場所に移りたかったので。
彼は帽子を取り、背負い袋の一番上にそれを押し込んで、口を閉じた。
これから挑もうという斜面を、意を決して睨む。
………。
「やっぱり怖いぃぃ」
「お前なあ!」
ムーンが大仰に溜め息をついた。
「さっさとしろ。おらっ、行くぞ!」
「やだっ」
「竜に食べられちまってもいいのかよ?」
「それもやだっ」
「高いの平気だって言ってたじゃんか!」
「この前と今じゃ、勝手が違うもーんっ!!」
再び始まる大騒ぎ。それを止めたのは、がさごそという音だった。
思わず動きを止め、そろーり、と視線を移す『光の戦士』一行。
「………」
「…今…何か、動かなかった?」
誰かが肯定・否定するより早く、
――質問に応えるかのように、もう一度音がする。
四人の視線が注がれた一点で、巣が揺れていた。
巨木下付近の、藁と枯葉の小山だ。先刻まで、気に留めなかった一角。
「な、何だ?」
「また竜の子供かな」
それにしては大きい。人間と同サイズか、それ以上かもしれない。
「お兄ちゃん竜かも」
「まだ居たの………?」
もし、その予測が真実だとしたら、危険を覚悟すべきかもしれない。
竜と人間、差は歴然としている。今度こそ本当に、餌になるか玩具になるか。
無事で済むとは思えない。
四人は出来るだけ寄り添い、身構えた。
各々いつでも武器を抜き、呪文を唱えられる体勢だ。
――緊張の一瞬。
そいつは大きな音と共に、ついに姿を現した!
「…ん……あ、あぁぁ〜〜――あー、よく寝た〜」
……………。
「…はぁ!?」
|