FINAL FANTASY 3 【序】



   序


            
  暗闇の奥、夜よりなお深い闇に閉ざされた場所があった。

 動くものはほとんど無く、音もない。

 そこに在るのは物言わぬ闇と、無表情で堅固な岩壁の連なりだけ。

 空間を支配するのは静寂であり、永久不変とも思われる時間である。



  しかし時間は流れるもの、そして熟すのをじっと待っている。

 事が起こり「運命」と名の付くものが動き出す、その瞬間を。



 変わらぬものなどない。

 いかに強固な岩盤でも風雨に削られ、形を変えるように……

 世界は常に、動きを止めはしないのだ。


  それが証拠に ── 変化は突然、始まった。




  大地は、何の前触れもなく揺れた。

 凄まじい咆哮を発して、さながら血に飢えた獣のように。


  あれほど堅固だと思われた石壁にひびが入る。

 無表情だった岩肌が、にやり、と不気味な笑みを刻んだ。

 静寂が陣取っていた空間には、既に音が満ちている。


 不変だった筈の場所は崩れていく…降り注ぐ瓦礫の雨。

 そして闇の中へ、微かな光が侵入する。




  …再び静けさが訪れた時、そこは一変していた。

  …ふと。



  りん、と何かが音を立てた。

 鈴の音にも近い…だが、金属のそれよりも、ずっと温かい…そして、

 もっと深く澄みきった音。


  一度、二度、三度。

 微かな音が響き、空気が震える。

 繰り返し繰り返し、微かだったものが始め小さく、徐々にはっきりと。


  やがて、音に聞こえていたそれは、声に変わった。

 次第次第にひとつの言葉を訴えはじめる。



   ───『ひかりを』……


   ───『光を!!』




  声が反芻し、空間が揺らぐ。

 すると、それに呼応したかのように辺りに満ちる異様な気配。

 どこか哀しげに響く声とは明らかに異質な、不気味な唸りが起こる。



 …そして、切々とした訴えは徐々にその中へ飲み込まれ、消えていった……。

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